ウェディングストーリー 結婚式のテーマ

【ウェディングストーリー】織姫と彦星

投稿日:2017年7月7日 更新日:

結婚式の日を七夕にしたカップルの物語。 なぜ、挙式を7月7日にしたのだろうか……。その理由を知ったウェディングプランナーが、二人のために考えた演出とは!?読んだあと、胸がキュンとしてしまいます。

結婚式のプランニングをするとき、いつも“テーマ”にこだわっている。“テーマ”と言われると少し難しそうに感じて考えるあまり黙り込んでしまうカップルも多いが、正直なところ、テーマはふたりに少しでも関係しているものであれば何でもいい。

好きな色、好きなキャラクター、好きな食べ物、好きな国、好きなイベント、ふたりに共通している趣味、思い出の場所……。

テーマを決めることでその後の打ち合わせがスムーズに進む、というのはウェディングプランナーとしても嬉しいポイントだけど、何よりも結婚式に彩りが加わってふたりらしさがグンと増す。

「“ふたりらしい”記憶に残る結婚式を実現するためにも、テーマを決めるのは大切です」。

これは、初めての打ち合わせをする時の私の決まり文句。そう断った後、ふたりの好きなものや、出会いのきっかけなど、結婚式のテーマとなりそうなヒントを探っていく。

そんな私の元に、ロマンチックで運命的なふたりがやってきたのはもう1年前の話だ。

「結婚式に、どうしてこの日を選ばれたんですか?」

最初の打ち合わせで、いつものようにイメージを膨らませていく質問を投げる。でも、私はこの質問の答えに大きなヒントがあることを確信していた。

なぜなら、ふたりが結婚式の挙げる日は7月7日。

1年に1度だけ、想いを募らせた男女が会うことを許されたあの日なのだ。

(たまたま……ってことはさすがにないよなぁ)

そんな事を思っていた矢先、たまたまどころでは済ませられないビッグな答えが返ってきた。

「初めて出会った日と、プロポーズされた日が七夕だったんです」。

保育士をしているという優しい笑顔が印象的な華子さんがそう答えた。

「僕たち、七夕に開催された街コンで出会ったんですよ。それでなんか、運命感じちゃったっていうか……。あ、俺の織姫ここにいた、みたいな」。

「私も、ビビビッときたんです。他にもたくさん参加者がいたんですけど、何か彼だけ特別で」。

照れ臭そうに、でも嬉しそうに、ふたりの馴れ初めを教えてくれた。

街コンに参加したきっかけは、ふたりとも友人からの誘い。だからそんなつもりはなかったが、どうやら運命の相手に出会ってしまったらしいのだ。

「それからすぐ付き合うことになって、出会って1年後の七夕の日、プロポーズをしたんです」。

「だから七夕は私たちにとってお守りのような日っていうか……新しい幸せが始まる日な気がするんです」。

それはまるで、1年に1度のデートを楽しんでいる織姫と彦星から、選ばれた人だけに与えられるギフトみたいだ。ふたりの話を聞きながら、星空で微笑む織姫と彦星が見えたような気がした。

ひと通り話を聞いた後、私の気持ちは勝手に固まっていた。そして満面の笑顔でこう言った。

「おふたりの結婚式のテーマは、“七夕ウェディング”で決まりですね」。

「きゃー!!! 虫! 虫! 虫が肩に乗ってるー!!」

「すごい草むらなんですけど!」

「ほら文句はもういいから、切るよー! せーの!」

結婚式を間近に控えた6月後半のある日、私は同僚と一緒に竹やぶで笹を探していた。

普段のビシッとしたスーツ姿とは真逆の、スウェットに長靴、汚れてもいいヨレヨレのTシャツ、首には汗をたくさん吸ったタオルを巻き、日焼けしないようにつばの広い帽子を深くかぶっている。

(私、ウェディングプランナーだよね?)

自分が何の仕事をしているのか一瞬わからなくなるほど、汗だくで、とにかく笹を探すことに必死だった。そうまでしてでも、どうしても、本物の笹をふたりにプレゼントしたかったのだ。

だって私にとってふたりは織姫と彦星。七夕に、笹は欠かせないでしょ?

笹が揃えば、次は短冊や飾り付けの準備。保育士をしている華子さんの得意分野でもあったので、飾り付けの作り方を教えてもらいながら新郎の達也さんと3人で準備に励んだ。

普段は料理人として働く達也さん。キッチンでの華麗(であるだろう)包丁さばきとは裏腹に、工作になると少し不器用な様子。そんな達也さんに、華子さんが優しく手順を教えていく。

その姿はまるで保育園の先生と生徒みたいで、とても微笑ましい。

そして私自身も、短冊や飾り付けの作成を童心にかえって楽しんでいた。

「大人になると、短冊に願い事を書くチャンスってなかなかないですよね」。

達也さんがしみじみとこう言った。

「だからきっと、ゲストは子供の頃を思い出して楽しんでもらえると思いますよ」。

すかさず、私自身が抱いていた素直な感情を達也さんに投げかえす。

「それ、想像するとなんかワクワクが止まんないっすね」。

達也さんは、目をキラキラさせながら答えた。

「結婚式の準備、最初は大変そうだなーと思っていたけど、当日みんなに喜んでもらえると思うと、こんなに楽しいものなんだね」。

仕事が忙しく、休みも合わないふたりは結婚式の準備が過酷なものとなると覚悟していたらしい。でも今、私の目の前では仲睦まじく結婚準備を進めているふたりがいる。

(やっぱり、結婚式準備はこうでなくちゃね)

ふたりが主役の結婚式。準備期間も楽しんでもらえるようにサポートをするのも、ウェディングプランナーの大事な役目だ。微笑み合うふたりを見て、私はそんなことを考えていた。

「長生きできますように」

「子供たちが元気に育ちますように」

「宝くじが当たりますように」

「ヒーローになりますように」

ふたりの結婚式当日、小さい子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、ゲストの願いが書かれたたくさんの短冊が笹に飾られている。

受付で短冊を配られたゲストは、誰もが口を揃えて「久しぶりで嬉しい!」と話している。

(頑張って竹やぶに行ってよかったなぁ)

気になって受付の様子を見に行った私は、喜んでいるゲストの様子を見て、改めて七夕ウェディングを実現できてよかったと思えた。

そして実はこの短冊、ただ願いを書くだけでは終わらない。

普通なことに“プラスα”の要素を掛けあわせるのがウェディングプランナーの腕の見せ所だ。

ふたりが七夕に「ビビビッ」と運命的な出会いを果たしたように、ゲストにも「ビビビッ」と感じるサプライズを仕込んでおいたのだ。

「えー、ここで新郎新婦より、七夕のプレゼントがございます!」

披露宴の途中で、司会者からサプライズの合図が入る。

「突然ですが、斎藤さん、山下さん、小泉さん、前の方へお願いします!」

名前を呼ばれたゲストは驚き、動揺しながら足を運ぶ。

「私のドレスの柄と同じ柄の短冊を選んだ3名に、ささやかですが七夕のプレゼントをお送りします」。

「あなたの願いが、叶いますように……!」

華子さんと達也さんそれぞれから、プレゼントが受け渡される。

プレゼントの中身は、七夕の天の川にちなんだ星が入ったグッズだ。箱を開けた後も、ゲストの笑顔が広がっていく。

受付で配った短冊は、ゲストがボックスから自由に選ぶというもの。その中に、華子さんが披露宴で着るドレスと同じ柄の短冊を3つ仕込んでおいたのだ。

お色直しのときに華子さんのドレス姿にも注目してもらいたかったから、あえてドレスに関係するサプライズにこだわった。

サプライズはもちろん大成功。ふたりの粋な計らいに、参加したゲストは誰もが拍手をして喜んだ。

2年前の七夕に運命の出会いを果たし、1年前の同じ日に家族となることを決めたふたり。そして共に迎えた3回目の七夕には、たくさんの人に見守られて幸せの一歩を踏み出していく。

きっとふたりは、織姫と彦星に選ばれた特別なカップル。そんなふたりの結婚式に関わることができた私も、間違いなく幸せなウェディングプランナーだ。

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marrial編集部

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