ウェディングストーリー 結婚式のテーマ

【ウェディングストーリー】女帝の微笑とビーグル犬

投稿日:2017年1月24日 更新日:

仕事の忙しさに追われ、作りかけていたペーパーアイテムの演出を挫折しようとしていた勇士さんと好美さん。
そんな二人のためにウェディングプランナー美穂さんがとった行動とは・・・・・・。
“女帝”と呼ばれるマネージャーのグッとくる一言にも注目です。

 

「私たちは慈善団体じゃないのよ。勘違いしないで」。

“また”怒られた。

新郎新婦の望みを叶えるためについ勢いで「おまかせください!」と過剰なサービスをしてしまい“女帝”こと柳本マネージャーにこっぴどくやられてしまった。

だって「ありがとう」って言ってもらいたいじゃん……。

気分を切り替えよう。今日はまた新しいカップルとの打ち合わせだ。

100通りのカップルがいれば、100通りの結婚式の形がある。今回の遠野勇士さん、小西好美さんカップルはお二人とも40歳の大人のカップルだ。

私も「20代のうちに結婚を!」なんて安直に思っているクチだったけど、このお二人を、特に新婦の好美さんを見ていると、「ああ、こういう素敵な大人の結婚なら、『あり』だなぁ」と魅力を感じた。

「手作り感のある式にしたいんです。例えばペーパーアイテムを手作りにしたりとか……」。

「ちょい待ち、ペーパーアイテムって何?」

「席次表とか招待状とか、要は式で使う紙のアイテムよ」。

往々にして男性はブライダル用語に疎いが、好美さんはそれを嫌な顔せずに解説する。

「お、面白そうだな! おもてなし感がでていいじゃん」。

理解が進めば、息の合ったお二人、話が早い。

「最近では手作りされる方も多いです。でも、それだけやる事が増えるので、少し大変ですよ」。

水を差さないように気を配りながらも、プロとしての意見も進言する。

「あと半年もあるし、二人でやれば何とかなるよ」。

「そうね」。

始終和やかな雰囲気で、計画は着々と進んでいくかに見えた。

1か月後...…。

勇士さんと好美さんがサロンへ訪ねてこられた。が、どこか様子がおかしかった。

「あのう、原口さん」と、言い辛そうに好美さんが口を開いた。

「手作り、やめようかと思うんです……」。

寂しそうな口調から、それが本意ではない事はわかった。

「何かあったんですか?」

「あのね、私も仕事がら遅くなっちゃうし、彼も夜勤がある仕事だからちょっと難しいかな……と」。

「俺もできるかと思ったんだけど、想像以上に決める事や準備する事が多くて……」。

勇士さんも申し訳なさそうに頭を掻く。

はっきり言っていたたまれない。何とかしてやりたいという想いが勝手に口を動かした。

「あの、時間とかの条件を無視できるなら、まだ手作りやりたいと思われますか?」

「……はい」。

これで決まりだ。

「やりましょうよ!」

思ったと同時に口が開いていた。

「こんなことで諦めるなんてもったいなさ過ぎます! 場所ならここを何とか使えるようにしますし、『労働力』もプラス1で」。

自分を指さして提案すると、コクコクと若干呆気にとられたようにカップルが頷く。

「待ってて下さい!」

「やってもうた」。

勢いよくたんかを切り、立ち上がったのは良いが、心の中で我に返る。それを実現するには、大きな山が立ちはだかっているのだ。

抜き足差し足でサロンの奥にある事務所のさらに最深部へ向かう。

「あのう……」。

恐る恐る柳本マネージャーの前に進み出る。

「なに?」

「ひぃっ、ゴメンナサイ、なんでも無いです」と言いそうになるのを踏み止まり、お伺いを立てる。

「夜9時以降もサロンを使わせて頂けないでしょうか?」

「何のために?」

しどろもどろになりながら顛末を説明する。

「火の元、消灯、戸締り。しっかりね」。

え……つまりOK?

「いいんですか?」

「おかしな人ね、あなたが頼んだんでしょ」。

珍獣を見るような目で“女帝”が顔を上げた。

「いや、そうなんですけど、この前、いらないサービスしてお叱りを受けたばかりなので……」。

「勘違いしてるわね、根本的に違うわよ。というかあなたこの前叱った意味わかってないようね」。

ヤブヘビ!!と戦慄している私をまったく意に介さないように女帝は言葉を繋いだ。

「この仕事、心が商品よ。あなたがこの前やったことは、カッコつけるためでしょ? 安易に書類に数字を書いて提出して、発注すれば手配は簡単にできて、お客様に一時的に『わー! こんな事までしてくれるんですね』と喜んで貰って。ただそれでおしまいだったでしょ?」

数字に厳しい女帝から「心」という単語が出てくるのは意外だった。

「あなたはバーゲンセールで物を買ったとき、店員さんの顔を覚えているかしら」。

「……いいえ」。

叩き売られた商品、安易にばら撒いた注文だけで手配できるサービス……。

私は記憶に残らないことを一時的な満足のためにしていたのか……。

「でも、誰かが一生懸命自分の願いに向き合って、努力してくれた事は忘れない。あなた今は良い顔しているわよ」。

あれ、褒められてる?

「頑張りなさい」。

女帝が微笑んでいるように見えたのは私の勘違いだろうか?

「美穂ちゃ~ん、疲れた~!」

午後22時15分、サロンで好美さんが机に突っ伏した。

「まだまだ、ばてるには早いですよ!」

「うへー! 美穂ちゃんスパルター」。

先ほどまで勇士さんも一緒に作業していたのだが、ちょうど夜勤の日だったので、少し前に出て行かれた。

三人で「残業」をするようになってから大分準備が捗るようになり、「何とかなりそう」と言える域まで仕上がってきていた。

そして「美穂ちゃん」と名前呼びして頂けるまでお二人と打ち解ける事が出来た。

「そういえば美穂ちゃん、好きなキャラクター何?」

唐突に聞かれ、「ああ、もうこの人は完全に集中力切れたな」と思い、ちょっと休憩するかと手を留める。好きなキャラクターと言われたら、一択だ。

「スヌーピーです!」

「あー、なんかいいよねぇ、ひょうひょうとした雰囲気で……こんな感じだっけ?」

さらさらと好美さんが何かの裏紙に腹の出たビーグル犬を書いた。が、どこかおかしい。

「ちょっ、スヌーピーには髭生えてない! これじゃスパイクです!」

「スパイク? 誰それ?」

「スヌーピーのお兄ちゃんですよ」。

「ほんと好きなのねぇ」。

こんな他愛もない話をするのはなんだか楽しくて思わずぷっと吹き出してしまう。

「しかし美穂ちゃんが担当でよかったわ。なんかこうして話しているだけで不安がなくなっていくよ」。

好美さん、お気づきでないかも知れませんが、それ、プランナー殺しの一言ですよ?

照れた顔を見られないように作業を再開した。

じっくりと、あれこれ考えた計画も、準備も、当日になればあっという間である。新郎新婦が一生懸命作った結婚式と披露宴はゲストにも「いいね」と好評で、手伝った甲斐があったなぁと、報われた気持ちになった。

ほとんどのプログラムが終わり、ほっとした時に事は起こった。

「実は、ここである方へのサプライズがあります!」

司会者がハイテンションで宣言した。

……え? こんなのあったっけ?

「なんだ」「誰だ」と会場がワクワクと騒めくのに反して冷や汗をかきながらタイムテーブルを確認しようとしたその時、

「原口美穂さん、前へお願いします!」と司会者が指名した。

へぇ、私と同姓同名の招待客が……いるわけない。

ええ~! そう来ますか~!!と頭の中で悲鳴を上げながら、おずおずと前に出る。

「皆様にご紹介します。今日のお膳立てをして頂いた、ウェディングプランナーの原口美穂さんです」。

いつの間にかマイクを握った勇士さんに紹介され、一礼すると、ぱちぱちと拍手が巻き起こった。

「美穂さんが居てくれたので今日こんなに楽しい式が出来上がりました! わざわざ許可を取って準備の場所を提供してくれたり、私たちがめげそうな時に励まして、引っ張ってくれたりと、心遣いがとても嬉しかったです。本当にありがとう。これは感謝の気持ちです」。

美穂さんが小さなワゴンに乗せられた物の覆いを取ると、世界的に有名なビーグル犬の顔を模したケーキが用意されていた。

ちょっと……ズルいですよこんなの。

視界がぼやけ、ひっくと何かが込み上げてきた。

遣った心が相手に届き、それが相手の心に響き、それが相手の記憶として永遠に残って行く。そして今回は更に返ってきた。こんなにうれしい事があるなんて。

「バーゲンで安売り」したわけじゃない、本当のサービスとは何か、それを教えてくれたのはこのお二人だ。

「ありがとうございます。(お二人のお気持ち)一生大事にします」。

「いや、ケーキはちゃんと食べてね?」

ぐしゃぐしゃの涙声で主語を端折ったお礼に、真面目な顔で突っ込まれ、会場が笑いで包まれた。

~完~

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