ウェディングストーリー 結婚式のテーマ

【ウェディングストーリー】僕のキッカケ

投稿日:2017年1月15日 更新日:

あるウェディングプランナーの、プランナーになったきっかけ。
それは、結婚式に参加したときに出会ったウェディングプランナーでした。

僕の1

トゥルルッ……トゥルルッ……

ぱしっ

「早く出ろっ」。と言外に急かしてくる内線着信に鍛え抜かれた反射神経で反応する。

来客の旨を伝えられ、そういえば今日だったなと思い出す。

「お前のガッコの後輩がOB訪問したいんだと。対応よろしく」。と上司に言われ、まぁたまには若い子とお喋りするのも悪くないかと引き受けたのは一週間前のこと。

とはいえ、OB訪問というものをいまだかつて、したこともされたこともないので「どんなものかなぁ」。と頭の中でうねうねと考えを巡らせたが、結局まとまらないまま至る現在である。

ロビーに降りると、リクルートスーツに“着られた”ちんちくりんな人影が待っていた。
ブライダル業界を意識したのか夜会巻にしたその髪型と、苦労の痕がまったくない靴にカバン。すべてが板についていない“The就活生”は僕の姿を認めるなり、ぱっと笑顔を浮かべた。

「はじめましてっ中都大学の佐々木ですっ、本日はお忙しいところありがとうございます!」

勢い余って言葉がつんのめりそうな元気さを微笑ましく思いながら、挨拶をする。
「こんにちは。山本です。弊社に興味を持っていただきましてありがとうございます」。

社内だと何かと落ち着かないので、最寄りの喫茶店に場所を変え、面談を開始した。

どうせ、「社内の雰囲気は」とか「ちゃんと有給は」みたいな面接で聞きにくいことを同じ大学の先輩なら、と聞いてくるのだろう……と少し斜にかまえていたのだが、開口一番彼女は、

「山本さんの就職活動はどのような感じだったんですか?」

と聞いてきた。

意表を突かれ、その拍子にまだ僕が彼女と同い年だった時の記憶が蘇ってきた。

僕の2

郊外にあるキャンパスの夏はうるさい。じーじーじーじーという蝉の声。そして「内定取れた!」「……るせぇ。俺はまだだよ」。という就活生の悲喜交々の声。

「……何がしたいんだろうな」。

この時期にまだ進路が決まっていない奴は珍しくない。が、僕の場合は致命的だった。

大抵の人間はやりたいことが無くても、どこかで折り合いを見つけて、自分の興味の持てそうなこと、やれそうなことを見つけて選択していく。でも僕にはその折り合いがまだつけられず、悶々と悩んでいた。

一応、就職サイトに登録してエントリーはしてはいるが、そんなモチベーションでは採用してくれる企業がある訳もなく、焦りばかりが募っていく。

自分が無価値に思え、じりじりと身を焼くのは決して暑さだけではなかった。

「ニート街道まっしぐらじゃん」。

「うるさい!」

友人の軽口も、軽口と思えず、いちいち噛み付き、そしてそんな自分に余計イライラする。負のスパイラルに陥っていたーー。

 

「我ながら結構惨めな状況だったね」。

「えっと……」。

少し自嘲気味な語り口になっていたのかもしれない。佐々木さんは少し困ったような顔をしていた。

「だから佐々木さんみたいにしっかりと就職活動に取り組んでいて、OB訪問までしている子は偉いって思うよ」。

困らせてごめん、と心の中で詫びながら持ち上げる。

「でも、そんな状態から何があってウェディングプランナーになられたんですか?」

「結婚式なんだ」。

「結婚式?」

「ちょうど大学4年の夏に従妹の結婚式に招待されてね。そこで起きたちょっとしたトラブルがキッカケになったんだ」。

僕の3

「由香里姉ちゃん」は僕より5つ年上で、家が近いこともあり、幼い頃から僕を弟のように可愛がってくれた。彼女から結婚式の招待状が来た時は、寂しい感情が無かったと言えば嘘になる。

式はつつがなく終わったが披露宴で事は起こった。

「新郎新婦ご入場です!」

司会者が声高らかに宣言する。しかし、一向にその気配が無い……。

会場がざわめきだす。

どうやらオーディオの調子が悪いのか新郎新婦入場の曲が流れないようだった。

焦り、気まずさ、いたたまれなさ……そんな空気が会場を満たした。

ふと、会場に据え付けてあるピアノが目に入った。反射で体が動いていた。テーブルの間を縫ってピアノに滑り込み、オロオロしている司会者に目で訴えかける。さすがプロ、一瞬で理解したのか、頷き返してきた。

「お待たせしました! 新郎新婦の入場です!」

『I’ll be your love』

由香里姉ちゃんと新郎の俊樹さんは2005年の愛知万博のスタッフをしているときに知り合ったという。ならばこの曲だろう。

「この曲好きなの」と薦められた愛知万博のテーマソングを僕も気に入ったので、ピアノの弾き語りを練習したことがあったのが幸いした。

正直なところ、人前で弾くことなんてほとんどなかったので緊張はしていたが、由香里姉ちゃんのために、という気持ちが勝り、根性で乗り切る。

最後の一音を弾き終え、拍手を聞き、ホッとする。

安心した途端、顔から火が出そうになるのを感じながら、新郎、新婦席を振り返ると、由香里姉ちゃんが涙ぐみながら笑顔で手を振ってくれていた。

(やばい、嬉しい)

ピアノを習っていて良かったとこんなに思ったことは初めてだった。

「あ~マジで緊張した! 疲れた~!」

会場を抜け出し、ロビーで汗を拭う。

「お疲れ様でした」。

後ろから声を掛けられ、先客がいたことに気付く。今日ずっと由香里姉ちゃんに付き添っていて、まるで新郎新婦の秘書みたいだなと思っていた女性だった。笑顔ではあるが、少しぎこちない。

「ええっと……?」

「あ、申し遅れましたウェディングプランナーの向井と申します。先ほどは素敵な演奏でした。おかげ様で私も命拾いしました」。

ウェディングプランナーという職業になじみは無かった。聞くところによると「新郎新婦の秘書みたいだな」。という印象はあながち的外れでは無さそうだった。

先ほどのトラブルは、預かっていた音源のCDをプレーヤーにセットしておいたはずが、流す段になって、無くなっていたのだという。

「私のミスなんです。確認不足で取り返しのつかないことをするところでした」。

(あー、それでへこんだ顔してるんですね)と声に出さず、頭の中で結論付ける。

「ミスなんて誰でもするもんじゃないですか、結果オーライですよ」。

大げさだなぁという意を込めて軽い気持ちでフォローをする。しかしその軽薄な言葉は一蹴された。

「私にとっては数ある結婚式の一つかもしれません。しかし、お客様にとっては一生に一度の大切な、かけがえの無い一日です。だから成功させて当たり前なんです、ミスは許されません」。

真剣な口調に少し気圧された。と同時にこんなに仕事に真面目な人がいるなんて、と驚く。

そして突飛もない質問が勝手に自分の口から湧いて出た。

「あの、どうすれば、そんなに真剣になれる仕事に出会えるんですか?」

「……はい?」

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「と、まぁ、そのプランナーに後日、色々と人生相談に乗ってもらっているうちに、『山本君向いてるんじゃない? うちの採用試験受けてみたら? あ、もちろん口利きはしないけど』と本気だか冗談だかわからない誘いを受けてね」。

苦笑いで、頭を掻きながら「でも」と言葉を繋ぐ。

「キッカケは馬鹿みたいに単純でも、その先で真剣に向き合えば、全力でやれば、どんな自分になりたいかは見つけられるよ」。

どこに行くか、どこにいるか。人はそこに価値を求めたがる。でも重要なのは、何をするかということ。この仕事はそれを僕に教えてくれた。

「佐々木さんもこれからどんな仕事をするにしても、正面から向き合ってくださいね。色々な人との出会いや縁を大事にしていれば絶対に何かを得られると思います。就活頑張ってください」。

「ありがとうございました!」

「こちらこそ」。

きらきらと目を輝かせている若い子に手を振って別れる。

「よっ、良いこと言うじゃん」。

「わ――――――!」

後ろから声を掛けられ思わず声を上げる

「向井さん……いつから?」

「山本君がピアノ弾く件くらいから?」

「……暇なんすか?」

「ん、割と」。

憎まれ口をサラッとスル―され、心の中で地団駄を踏む。

「懐かしいよね~、まさかあのピアノ少年と一緒に仕事するなんて思ってもみなかったわ」。

「向井さんが、試しにうちの会社の採用試験受けてみたら?って言ったんじゃないですか」。

「まさか真に受けるとはね~」。

たとえ冗談みたいな話でも、縁は縁だ。そこから始まったものが、やはり冗談だったか、本物だったかは、その後の自分自身の行動と結果が決める。少なくとも僕は冗談だったとは思っていない。

「……ありがとうございます」。

「え? なんて?」

「二度は言いませんから」。

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