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【ウェディングストーリー】私の後輩くん

投稿日:2017年1月13日 更新日:

不器用な新人男性ウェディングプランナー。
初めて担当を持ったときのエピソードです!

美川華恋(よしかわかれん)、24歳。彼女は『株式会社はぴねす』が運営している結婚式場に勤務して2年目の新米プランナーである。しかし、そんな彼女にも最近後輩ができた。三上親太朗(みかみしんたろう)。名前に“親”の字がつくわりに、不愛想だ。

高校から大学までラグビーをやっていたそうで、ものすごくガタイがいい。そのガタイと性格のせいか結婚式場に見学に来たカップルに圧迫感を与え、お客様を萎縮させてしまうということが何度かあった。当然お客様はみな顔を曇らせお帰りになってしまう……。

それを見かねた支配人は「三上はまだお客様の前に出せないなぁ……」と頭を悩ませ、現在はお客様と接する仕事を三上には一切任せることはない。三上はほぼ雑用係といったところだ。

何とかしたいという思いは、華恋にもあった。

しかし、どうしていいかなんて、新米の華恋に分かるはずもない。困ったあげくに、華恋の“親友”でもあり、自身がプランナーとして担当している“新婦”でもある浅川深月(あさかわみづき)を頼った。深月は精神科医として多忙な日々を送っている。華恋にとって今、彼女の心理学の知識が必要だった。

華恋が非番の火曜日。昼休みをつぶしてまで病院近くのカフェで会ってくれた深月に、例の後輩のことを話した。

「ふ〜ん。なるほどね。そういう人ってちょっと専門的な話になるけど、クレッチマーの体型分類でいうと筋肉質型になるのよ。」

「はぁ……」

唐突に始まった心理学講義。これを聞くのは、高校の同窓会以来だ。

深月はバッグから『パーソナリティー心理学』という本を取り出し、そのページを開きながら説明してくれた。

「几帳面で責任感が強く、物事にとても熱中します。また周囲には不器用、まわりくどい、と思われることがある。思い込んだら一筋で、どんなことも白黒つけたがり、曖昧なことや中途半端なことを嫌います。」

「だってさ。こういう人だから、華恋はその後輩くんの挙動をじっくりと見守ってあげることが必要かもね。それで、後輩くんの努力と成果をしっかり褒めてあげて。堅いとかまわりくどい人ってたまにイラってすることあるけど、すごく責任感が強くて頑張り屋さんだから、そこを認めてあげればどんどん成長すると思うわ。」

深月は専門家として、そして華恋をよく知る友人として、分かりやすく具体的なアドバイスをたくさん話してくれた。

「わざわざ、時間とってくれてありがとう!助かったよ、さすが先生。なんとか頑張ってみるね!」

スキッパータイプのストライプシャツとベージュのガウチョパンツをパスタのソースで汚さぬよう、ナフキン代わりに敷いていた大判ハンカチをバッグにしまってから、深月に声をかける。

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「いいの、いいの!あさってだっけ?私たちの打ち合わせ。楽しみにしてる!ミッチーにもしっかり来るように釘刺しとくから!じゃあ、先戻るね!またあさってね!」

お財布から野口英世札を1枚取り出して華恋の持つ伝票に挟んでから、深月は病院へと戻っていった。

翌日華恋が制服に着替え更衣室を出ると、スタッフ専用の部屋にこもり必死にノートとにらめっこしている三上を見つけた。

「三上くん。何見てるの?」

いきなり話しかけた華恋に驚いたのか、三上はノートを閉じかけたが、とっさに華恋がノートを奪って中身を見た。

ノートには仕事で先輩から教わったことや、自分で調べたであろう接客時の会話で役立ちそうな情報、流行りのお笑いネタまでキチンとジャンル分けされて綺麗な文字でビッシリと書き留められていた。

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(几帳面……)

昨日の深月の分析で出た言葉がリフレインした。

同じ日ガーデンが見える廊下を歩いていると、チャペル近くの草花の手入れがしっかり行き届いていることに華恋は気がついた。

(もしかして……)

昼休み、ガーデンに出てみると丁寧に草花に水をやっている三上の姿があった。その顔は、普段不愛想な表情とは違って、やわらかい素敵な笑顔だった。庭の手入れをしながら三上は口をパクパクさせ仮想のお客様との会話の練習をしていた。

(見直したな、三上のこと。)

華恋は三上に声をかけることなくガーデンを後にして支配人のもとへ向かった。

華恋は三上の頑張り、そして自分が責任をとるという覚悟を支配人に伝え、三上を自分のアシスタントプランナーとして一度打合せに同席させる許可をもらった。それに親友の深月の打合せであれば安心だと考えていた。

「なんでその後輩くんにそんなに入れ込んでるの?あ、もしかして好きなの?その後輩くんのこと。」

先日の相談の時に深月が言った冷やかしの言葉が華恋の頭に浮かんだ。

(決してそんなんじゃないけど……)

華恋は、高校生の時に不慮の事故で弟を亡くしていた。

同じ年の友達と比べても体が大きくて、性格が不器用だった華恋の弟。華恋は無意識ではあるがその姿を三上に重ねて見ていた。

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「いらっしゃいませ!」

華恋と一緒のタイミングで、三上が語先後礼をする。暑い中打ち合わせに来てくれたお客様に冷たい麦茶をお出しして打ち合わせは始まった。今日は式で流す映像に関する打合せだ。

新婦である深月と新郎である道明(みちあき)は、生い立ちからふたりの馴れ初めまでしっかりゲストに伝えたいという思いが強かった。とくに深月は今まで出席した友人の結婚式とは違ったことをやりたいという思いがとくに強い。

「ただのプロフィール映像だと面白くないよ〜ねぇミッチー!」

なかなかふたりの納得がいくカタチに話がまとまらないまま、打合せの時間だけが過ぎていった。

そんな中、アシスタントプランナーとして華恋の隣に座っている三上が口を開いた。

「映像の中に、道明さんが深月さんにプロポーズした時の再現ドラマを入れるのはどうでしょうか……?しかも、ご本人出演の再現ドラマにして……」

意外な三上の提案にその場の全員が一瞬戸惑った。

少しの静寂の後

「それいい!面白そう!ねぇ、ミッチー、いいよね?」

深月が目を輝かせて満面の笑みで喜んでいる。

三上はふたりから事前に提出されていた慣れ染めやプロポーズに関する資料にくまなく目を通してこの打合せに臨んでいた。そして、道明からのプロポーズがドラマチックだったこと、そして深月がそのプロポーズにとても感動したことをちゃんと覚えていたのだ。

「おふたりのプロポーズシーンをもう一度おふたり自身が再現することで、おふたりにとっても思い出にもなりますし、その再現ドラマを観るゲストの方々はプロポーズシーンだけでなく演技を頑張っているおふたりの姿も楽しんでいただけると思うんです。」

「なるほど、確かに映像としては面白そうだね。でも……もう一回……俺があれをやるってことだよね……」

「いいじゃない!もう一回やってよ!私もう一回プロポーズされたいな!私本当に感動したよ!」

「私も深月からその話聞いた時、ビックリしましたよ。まさか……ショッピングモールの楽器屋のピアノで本気の弾き語りをするなんて……しかもオリジナルのプロポーズソング!たくさん買い物客が集まって来たんですよね?」

「うん……あと警備員も……一応楽器屋の店長には事前に許可もらっていたんだけど……あそこまで大騒ぎになるとは店長も思っていなかったみたいで……もう一回やらせてもらえるかな……」

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徐々に話が盛り上がっていくのをみて三上も嬉しくなった。そして今までどこにも発散できなかったプランナーとしてのエネルギーがどんどん湧き上がってくるのを感じていた。

「僕の知り合いでまだアマチュアですけど映画撮っている人がいるんです。その人に連絡とって相談してみますね。それに、演出は学生時代演劇部だった美川先輩にやってもらいましょう!ね!先輩!」

ここまで、三上がしっかりと意見を言えるなんて、と華恋は目を見張った。自分が演劇部だったとう情報をどこで仕入れたのかが気になったが、それよりも華恋は三上の成長が嬉しかった。

「ねぇ、三上くん。これからも華恋と一緒に私たちの担当してもらえるんだよね?この企画は三上くんがいないとできないと思うし!ねぇミッチー、華恋と三上くんのふたりが担当の方が私たちは安心だよね?」

「そうだな!まぁ、やるからにはちゃんとした映像作りたいしな……。ちょっと俺はまだピアノの件は不安だけど……でも三上くんが一緒ならなんとかなりそうだしね!」

華恋は深月の優しさを感じていた。そして三上の方をみて返事を待った。

「先輩、おふたりがそういってくれるのであればこの後もおふたりの結婚式担当したいです。是非やらせてください。お願いします。」

三上のその純粋で真っ直ぐな気持ちが華恋には痛いほど伝わってきた。

(きっと最高の結婚式になる!)

「よし!わかった!私から支配人に頼んでみるから!任せておいて!三上くんは知り合いに連絡とって撮影に関する相談をしてみて!私は台本を書く。それから……道明さんは今日からピアノの練習お願いしますね!」

「先輩、ありがとうございます!深月さん、道明さん、精一杯、おふたりのサポートをさせていただきます!一緒に最高の結婚式を創りあげましょうね!」

三上の初担当は、先輩プランナーである華恋の親友であるカップルとなった。三上は、ウェディングプランナーとしてようやく最初の一歩を踏み出すことができた。

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