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【ウェディングストーリー】お父さん、今まで育ててくれてありがとう

投稿日:2017年1月12日 更新日:

一つ育てられた新郎様。
結婚式当日新郎様は今ま育ててきてくれたお父様に
どのようにして感謝の気持ちを伝えられるのしょうか…?

 

健、28歳。1カ月後には付き合って3年になる寛子との結婚式が控えている。チャキチャキと動いてくれる寛子のおかげで式の準備は順調で、直前となった今でも比較的穏やかな毎日を過ごしている。ふたりが挙げる式は、いたってオーソドックス。結婚式場に併設されたステンドグラスが美しいチャペルで挙式し、そのまま披露宴会場に移動して披露宴パーティーを行う。

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演出も何か特別なことをするわけでもなく、ファーストバイトやキャンドルサービスなど、定番のプログラムを盛り込んだシンプルな内容だった。それはすべて、寛子の希望だった。寛子のお腹には6カ月の赤ちゃんがいる。あまり派手なことはせず、大切な人達とささやかなひと時を過ごすことが寛子の願いだった。健もそれで良かった。健にとっては、寛子が喜ぶ顔を見ることが何よりも優先すべきことだった。

「いいか、健。奥さんに毎日笑ってもらえるようにすることが、夫としての男の役目だからな」。

それは健の父親が、健がまだ小さい頃から口癖のように何度も口にしてきた言葉だった。そんな父親の影響で、健は幼い頃から、女性の笑顔は男が守るもの……そんなイメージをぼんやりと抱いていた。

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健は自分の母親を知らない。健の母親は生まれつき心臓が弱く、健を妊娠する前には定期的に病院で検査を受けて薬を飲んでいた。妊娠は難しいかもしれない……そう諦めようと思った夫婦のもとに健がやってきた。医者のサポートを受けながらも、母は毎日幸せな日々を送っていたそうだ。健の名前は、健康の健。生まれつき病弱だった母は、お腹の子が男の子と分かった時、体が丈夫でたくましい男の子に育ってほしいという願いを込めて、健という名前をつけたいと父に相談してきたそうだ。
健を出産して2日後、母は心臓発作を起こしてこの世を去った。

それは本当に急な出来事で、つい数時間前までは元気に喋っていたそうだ。医者が言うには、健の出産で体に相当な負担がかかってしまっていたらしい。出産後、今まで受けていた定期診断を再開するたった2日前の出来事だった。

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それから父は、再婚することもなく男手一つで健を育て上げた。トラックの長距離運転手をしていた父は、不在にする際には亡くなった妻の家に健を預けて面倒を見てもらっていた。家へ帰る頃にはいつも、健が好きなおやつを一つだけ、お利口さんに待っていたご褒美として持って帰ってきてくれた。

そうして事あるごとに、あの言葉を健に語り掛けていた。自身が妻に対してしてあげることができなかった後悔を、自分をいましめるかのように口にしていた。

愛する妻の死後、父がどれだけの深い悲しみを背負いながら生きてきたのか、幼い息子を育てるためにどれだけの苦労と努力をしてきたのか、子どもの頃の健には知るよしもなかった。当たり前のように進学させてもらい、当たり前のようにご飯を作ってもらい、中学、高校では、健の部活の応援もしてくれた。そんなあまりにも当たり前にあった父の愛情を、大人になった今、当たり前ではなかったのだとようやく気が付いた。

働くこと、お金を稼ぐこと、家事をすべて行うこと、家族に優しくすること、これらをすべて、文句も言わずただ黙々とこなしてきた父は、大した男だ。健は自分が結婚して夫と父親になる立場に立って、初めて父の偉大さを痛感した。そして若くして愛する妻を亡くすことがいかに辛いことか、今なら想像ができる。

「息子から父親に向けて感謝を伝える演出って、何かあったりするんですかねぇ……」

結婚式に関しては寛子の好きなようにすればいいとは言ったものの、健はどうしても、心にあるくすぶった感情を消化しきれずにいた。だからこうして、式の直前になってふたりの式を担当してくれているウェディングプランナーの由紀の元を訪れたのだ。

「いやぁ……何か……そんな大々的なものでなくっていいんです。シンプルなもので……。ただちゃんと、父親にありがとうって伝えるきっかけが欲しいっていうか……」

由紀はいつも、健と寛子の話を親身になって聞いてくれるウェディングプランナーだった。この式場で結婚式を挙げると決めた理由も、由紀のその人柄だった。寛子はまるで昔からの友人のように由紀のことを信頼し、式に関する相談はもちろん、家族のことや健とのことなど何でも話した。そのおかげで、由紀との打ち合わせがある日の寛子はいつもご機嫌だった。

寛子ほどではないにしても、健も由紀のことを心から信頼していた。定番でシンプルな式で良いと告げたふたりを理解しながらも、健と寛子ならではのスパイスをさりげなく盛り込んだ演出を提案してきてくれた。口数が多いわけでなく、どちらかというと常に聞き役に回りながらも要所要所で的を得た提案をする由紀のセンスの良さは話していてとても心地のいいものだった。

(由紀さんなら何とかしてくれるんじゃないか)。

健はそんな思いで、今からでも間に合う父親への感謝を伝える演出がないか、相談に訪れていた。

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そして迎えた式当日。挙式も滞りなく終わり、披露宴も順調に進んでいる。宴が終盤に向かうに連れて、健の緊張は高まっていった。そして訪れた親進呈ギフトを渡すシーン。健は寛子と一緒に用意した両家の親へのギフトを渡す際、誰にも気づかれないよう父親にだけこっそり小さなボックスをプレゼントした。

不思議に思った父親は席に戻って箱を開けてみると、そこには、トラックの出張から帰る際にいつも買っていった、健の好物だったチョコレートがぎっしり詰まっていた。そしてそれらチョコレートの包装紙には、健が生まれた時から28歳になるまで、1年毎にその歳の健の姿がプリントされている。箱の底には、真っ白い二つ折りのカードが埋まっている。

「親父、今まで育ててくれてありがとう。母さんもきっと、親父の横でずっと笑顔だったと思います」。

何の装飾もないシンプルなそのカードを開くと、健の手書きでこの一言が添えられていた。

お世辞にもキレイとは言えない健の字だが、一文字一文字丁寧に書かれた様子が見てとれる。生まれたばかりで顔を真っ赤にして泣く0歳の健、幼稚園で初めて友だちができて嬉しそうな3歳の健、小学校にあがり、初めて試合でヒットを打つことができた時の健、中学校の運動会のリレーで一番になった時の健、そこには、これまでの健と父親の思い出がぎっしりと詰まっていた。その一つひとつを眺めながら、健の父は人知れず口を堅く結び、こみ上げてくる感情をのどの奥にぐっと飲み込んだ。

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「必ず、お父さんと一緒の思い出の写真を選んでください」。

そうアドバイスをくれたのはウェディングプランナーの由紀だった。ぼんやりした健の相談を親身になって聞き、大げさじゃないけどとびきりのサプライズを提案してくれたのだ。

「二人の結婚式のプランナーが由紀さんでよかった」。プレゼントを渡した後、健は心の底から由紀に感謝した。

健はギフトを渡した後の父親の様子は知らない。だが由紀が、式場を後にする時にさりげなくその様子を教えてくれた。少し照れ臭さを感じつつも、自分なりに精一杯の感謝を伝えることができたことに健の心はすがすがしさで満たされていた。

「今度、親父と母さんとの思い出話でも聞いてみようかな」。

二次会に向かうタクシーの中で、健はそんなことをふと思ってぼんやりしていた。

「健、眠たいの!? しっかりしてよ、これから二次会なんだから!」

寛子からの声で、はっと現実の世界に引き戻される。顔を上げると、寛子はぼーっとしていた健を見て笑っている。

「いいか、健。奥さんに毎日笑ってもらえるようにすることが、夫としての男の役目だからな」。

幼い頃から何度も言われてきた父親の言葉を思い出して、寛子の笑顔をこの先も守ることを健は固く心に誓った。

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